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BLANC DE BLANCS (ブラン ドゥ ブラン)店主 赤坂 翔さん

てぃーだ (TiiDa)
店長 清水秀樹さん

板倉ニュータウンからほど近い渡良瀬遊水地は、ラムサール条約にも登録されている自然の宝庫。スポーツやレジャーのメッカとしても知られています。その広々とした空の下、おいしい食事がゆったり楽しめると評判の「てぃーだ」。聞くところによると、店長の書を目当てに来店するお客さんもいるとか。いったいどんなお店なのか、店長の清水秀樹さんに会いに行ってきました。

お客さんと話すことが
何よりのリハビリ、
わくわくの源です
てぃーだ (TiiDa)

35歳でパーキンソン病になり
レストランの社長になると決意

お店のオープンはいつですか? 開業のきっかけを教えてください。

オープンは2011年4月、そう東日本大震災の年です。こんな時に開業していいのかと迷いましたが、建物が建ってしまったのでバタバタと始まりました。宣伝はしていなかったけれど、初日からけっこうお客さんが来てくれました。

開業のきっかけは、病気になったことです。私は小学3年生ぐらいから、ずっと社長になりたかったんです。何をするかは決まっていなかったけれど、とにかく社長になるぞと思っていました。ところが社会人になっても社長になれる要素はない。おかしいなあと思いながら転職を繰り返していたら、35歳で若年性パーキンソン病になってしまった。

もう転職を繰り返すことはできないので、かねてからやりたかったレストランを絶対にやろうと決心しました。調理師免許を取るには実務経験が必要ですから、飲食店に勤務し修業。終盤は病気のために包丁が持てなくなりましたが、それでもハードな仕事に3年間耐えました。

レストランをやりたいと思ったのはなぜですか?

新潟のリゾートホテルで仕事をしていたときに、ほとんど稼働していないレストランのプロデュースをやらせてもらった経験があります。すると前年比300%ぐらい売り上げが伸びて、やりがいを感じました。病気になったときに、本当にやりたいことは何か、今まで一番エキサイティングだった仕事は何かと考えたら、レストランだったというわけです。

渡良瀬遊水地の畔を選んだ理由は?

リゾートっぽい雰囲気のレストランを作りたくて、公園の近くなど広い場所をあちこち探して、ようやく見つけたのがここ。広い土地なので個人に貸してくれるかどうか不安でしたが、すぐに大家さんのところに行って交渉したら、15分後にOKしてくれました。いい大家さんでラッキーだったと思います。

板倉ニュータウン てぃーだ (TiiDa)青空に生える個性的な外観。四季折々の花が咲くガーデンも

店名の由来は?

「てぃーだ」とは、沖縄の言葉で太陽のこと。実は私は24歳のときに自分でスノーボードのショップを始めたんですが、半年でつぶれてしまって……。傷心を癒やしに向かった沖縄でこの言葉を知り、店名にしました。

渡良瀬遊水地は空が広くて、よく晴れた気持ちいい日が多いです。建物はガラス窓を大きくとって、自然光がたっぷり入るように設計しました。水辺で日向ぼっこやアクティビティを楽しんで、おなかが空いたらここで食事をしてくつろいでもらいたいなと。

板倉ニュータウン てぃーだ (TiiDa)店内は窓が大きく開放感たっぷり。花咲くガーデンが見渡せる

おいしい家庭料理で
人の集まる居心地のいい店に

自慢のメニュー、料理のこだわりを教えてください。

目指したのは、人が集まる居心地のいい店です。同じ人が毎日来ても飽きない料理を出そうと考えて、たどり着いたのが家庭料理。家庭料理とは、世界中のおいしいものを日本流にアレンジしたものだと思っているので、家庭料理のおいしい店を作ろうと決めました。自慢はハンバーグとコロッケ。どこにでもあるメニューだけれど、それがおいしいと言われたら素敵じゃないですか。

ピザも人気です。実はこの近くに有名なピザ職人の店ができたときに、一度はピザをメニューから外したんです。でも、それから毎晩、自分がピザを作っている夢を見るようになって……。それなら誰もやっていないピザを作ろうと試行錯誤の末にできたのが、みたらし風味の餅入りピザ。最初はまったく売れませんでしたが、宴会メニューに組み込んだら「おいしい!」と評判になり、常連さんは「とりあえずピザ」と一番に注文してくれます。

板倉ニュータウン てぃーだ (TiiDa)人気のハンバーグ、コロッケ、油淋鶏を盛り合わせた大人プレート
板倉ニュータウン てぃーだ (TiiDa)かつて過ごした新潟から着想を得た「お餅ピザ越後」
板倉ニュータウン てぃーだ (TiiDa)ドリンク付きの手作りロールケーキも好評

テラス席も広くて気持ちよさそうです。

外のテラスやステージは、厨房を担当している兄が手作りしたもの。鳥が運んできた種で四季折々の花が咲くワイルドフラワーガーデンは、母が楽しみながら管理しています。テラス席はペットOKなので、犬、猫、ウサギ、フクロウなどいろいろな動物が飼い主さんと一緒に立ち寄ってくれます。

奥にはファミリールームもありますね。

元々は中央の建物だけでしたが、それではテーブルがすぐに埋まってしまうので、2年目に多目的ルーム、3年目にファミリールームを増築しました。ファミリールームはお子様連れでも気兼ねなく過ごしてもらえるようにソフトマットやおもちゃも用意しています。

板倉ニュータウン てぃーだ (TiiDa)テラスはペット同伴のお客さんに人気
板倉ニュータウン てぃーだ (TiiDa)ちょっと奥まって独立感のあるファミリールーム「ワラビー」

店のピンチをきっかけに
書のプレゼントをスタート

多目的ルームはどんな使い方ができるのでしょう?

私は転職を繰り返していたときにセミナーや勉強会に行きたかったけれど、なかなか機会がありませんでした。機会があればもっと早く社長になれたかもしれません(笑)。私と同じ思いの人がいるはずだと思って、この場所を作りました。文章塾、絵画教室、習字教室、動画の撮り方セミナーなど、いろいろ使ってもらっています。食事をしてもらえればいいので、使用料は無料です。

味のある書と絵が飾られていますが、ご自身の作品ですか?

そうです。ここで習字教室があったときに、参加者がいなかったので代わりに私が受講し、初めて筆を持ちました。その頃、私はパーキンソン病の症状で思うように文字が書けなくなり、それがコンプレックスでした。ところが、筆だと手は震えず、味のある字が書けたんです。嬉しくなって、そこから書の勉強を始めました。

来店されたお客さんと話をして、浮かんできた言葉を書いてプレゼントしています。考えても思いつかないのに、話をしていると自然と言葉が浮かんでくるんです。これも病気になったおかげかなとか、35歳まで迷いながら仕事を探していたことが役に立っているのかなと思いますね。

板倉ニュータウン てぃーだ (TiiDa)多目的ルームの入り口には筆文字アートの案内が

なぜ書のプレゼントを始めたのですか?

レストランは3年目、5年目に山場が来るといわれていますが、この店もそうでした。師匠と慕う先輩に相談すると、知り合いの社長さんを80人も店に連れてきて売り上げに貢献、ピンチを救ってくれたんです。その先輩に「本当に店を立て直すのはお前の力だよ」と言われて、私は力が出ました。

私にできるのは書を書くことだけです。役に立つかは分からないけれど、心を込めて書けば喜んでもらえるかもしれないと、店に来てくれたお客さん全員に書こうと決めました。自分から声をかけるのは勇気がいりますが、勇気を出して話しかけると、「実はこんなことがあってね…」と話してくれるものです。

店に入るとすぐ横に熱風方式の焙煎機が置かれている浮かんできた言葉を迷いなく書にする清水さん
焙煎したスペシャルティコーヒーの豆をその場で挽いてくれる書とともに絵も描く。名刺やTシャツを作ってほしいという要望もあるそう

どんなお客さんが多いですか?

ここは県境なので、6割は他県からのお客さんですね。全員に話しかけるから分かるのですが、会社の経営者、起業家、好きなことを仕事にしている方、病気やけがを克服した方などが多い。書をプレゼントしたお客さんが、新しいお客さんを連れてきてくれることもあります。

渡良瀬遊水地はサイクリングの名所ですから、サイクリストもたくさん来店してくれます。店の前のサイクルラックは、「我々を歓迎してくれる目印になるから置いてくれ」と常連さんが送ってきたもの。どうやらサイクリストの間ではけっこう知られた店のようです。

板倉ニュータウン てぃーだ (TiiDa)サイクルラックと自転車用の空気入れも用意している

毎日来てくれる常連さんも多いです。音楽をやる方もいて、数組のバンドが月1回ペースでライブをやっています。使用料やミュージックチャージは取らず、演奏者もお客さんも食事をしながら自由に楽しんでというスタイル。コロナ禍でしばらく中断しているので、早く再開したいですね。

板倉ニュータウン てぃーだ (TiiDa)清水さんもライブに飛び入り参加。楽しい時間を共有できる大人の空間でもある

人とのつながりを力に
新しいことにチャレンジ

水辺と緑の豊かな街・板倉ニュータウンの印象は?

認めてもらうのは難しそうだなというのが、板倉町の第一印象でした。でも、そんなことはありませんでした。この店をオープンしてから、私はお客さんで悩んだことは一度もありません。とりわけ、板倉ニュータウンのお客さんはおしゃれで、品がよくて、やさしい人ばかりです。

板倉ニュータウンの最大の魅力は、渡良瀬遊水地という自然の宝庫が身近にあることではないでしょうか。いろんな楽しみ方があるし、いつでも気軽のリゾートの雰囲気を味わえます。せっかくこんな素晴らしい自然があるのだから、もっとアピールして新しい住人をどんどん呼び込んでほしいと思っています。

清水さんの暮らしのこだわりや楽しみを教えてください。

こだわりは、ネガティブワードを使わないこと。幸せの神様が怒ってしまうと思っているので。楽しみは、お客さんと話すこと。話をするだけでもわくわくするし、書を書かせてもらうと気持ちがすっきりします。

もう一つは目標を持つこと。実は2年前から何か新しいことを始めようと相談していて、お客さんの話を聞いて書を書く様子をユーチューブで配信したらどうだろうと、動画の撮影を始めたところです。さまざまな困難を乗り越えてきたお客さんの話を伝えて、視聴者に力を与えたい。それが今の目標です。

板倉ニュータウン てぃーだ (TiiDa)5年間で書いた書は800枚以上になる

清水さんにとってのITAKLURA LIFEとは?

オープンから10年、店に出たくないとは一度も思ったことがありません。お客さんとのコミュニケーションが、私にとって何よりのリハビリであり、わくわくの源ですから。大らかな自然があり、刺激をくれる人たちがいるここは、やりたいことをやらなければもったいないと思える場所ですね。このコロナ禍は大きな試練でしたが、試練があれば成長できる。そして私の周りに助けてくれる人がたくさんいます。人とのつながりを力に、希望をもってこれからもチャレンジしていきます。

立地も、建物も、人も魅力的なお店「てぃーだ」。リゾートを思わせる解放感、ほっこり温かい料理、清水さんの書や絵を目的に行ってみるのもおすすめです。

[ DATA ]
てぃーだ (TiiDa)
所在地:〒374-0111 群馬県邑楽郡板倉町海老瀬4857-1
電話:0276-78-7658
営業時間:
ランチタイム 火~日曜 11:30~15:00(ラストオーダー14:30)
デイナータイム 水~日曜 17:30~21:00(ラストオーダー20:30)
火曜日はランチのみ営業
定休日:月曜日
駐車場:20台
店内41席、テラス12席 終日禁煙
WEBサイト:https://tiida-planning.wixsite.com/official

てぃーだ (TiiDa)

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